こんにちは。陵です。
チラシや名刺などの紙印刷のデータを作成するとき、どのソフト(アプリケーション)で作ればいいでしょうか?
かなり以前はAdobe社(アドビ社)の「Illustrator(イラストレーター)」または「Photoshop(フォトショップ)」というソフト(アプリケーション)で作るのが必須でした。
理由は、印刷工場がこのソフトで作ったデータにしか対応していなかったからです。
ひと昔前は、印刷物のデータ(入稿データ、完全データ、版下データなどと言います)を作成するのは、完全にプロの仕事でした。
いわゆるグラフィックデザイナーです。
なので、印刷用のデータを作る専門のソフトができて、それがAdobe社の「Illustrator」や「Photoshop」だったんです。
(ちなみにその前は版下は手作業で作ってました!)
それで、各印刷会社もそのソフトに対応する設備を整えていました。
当初の「Illustrator」や「Photoshop」は完全にプロ仕様で、Macのパソコンにしか対応してませんでしたし、全く一般向けのソフトではありませんでした。
価格もべらぼうに高くて、確か私の記憶ですと15万円~20万円くらいしたような気がします。(うるおぼえですが。。。)
私はもともとグラフィックデザイナーで独立もしていましたので、お金がない中Macとプリンターと「Illustrator」「Photoshop」をなんとか買いそろえて、百万円近くかかった記憶がございます(泣)。
当時はパソコンも高かったんです。。。
それが今や技術がかなり進歩して、いろんなことが可能になりました。
まず「Illustrator」や「Photoshop」がWindowsにも対応しました(これはだいぶ前です)。
これによって多数派であるWindowsユーザーも「Illustrator」や「Photoshop」を使って印刷用のデータを作成できるようになりました。
※今後のことはわかりませんが、少なくともwindows10までは互換性があります。
また、Adobe社の料金体勢も変わって、ソフトを購入するのではなく、サブスク(一定の月額制)になりました。
そのため、初期投資がかなり少なく済むようになりました。
そして、印刷会社の方でも、「Illustrator」や「Photoshop」で作成されたデータだけでなく、PDFのデータでもOKになったり、WordやExcelのデータでもOKという印刷会社も出てきました。
これらの流れにより、印刷用データの作成は、「完全なプロの仕事」から「一般の方でもできる仕事」に変わってきました。
これは、一方でデザインの仕事の価格破壊にもつながっているので、元グラフィックデザイナーの立場としては正直複雑な心境ではあります。
ただ、これは世の中の流れですし、長いこと不景気が続いている日本で、各事業主が自分のビジネスや商品をなるべく低コストでアピールできるようになるのは、悪いことではないとも思っています。
ちょっと話がそれましたが、とにもかくにも今は印刷会社がいろいろなデータに対応可能になったということでございます。
だったら、おそらく多数の方や企業が持っているWordやExcelで印刷用のデータを作っても問題ないか、というと、実際はそうでもありません。
印刷会社がいろいろなデータに対応できるようになったとはいっても、やっぱり印刷機に一番しっくり対応しているのは「Illustrator」や「Photoshop」なんです。
印刷物をデザインするときに、重要な要素は大まかにいうと
・文字(大きさや文字のデザイン)
・色
・レイアウト
・画像
の4種類だと思います。
まず「文字」については、大きさだったり、フォントだったりにこだわって作ることが多いです。とくに目立つキャッチコピーや商品名は。
太字や斜体にしてみたり、影をつけてみたり、グラデーションにしてみたり。
そういった文字の加工をした際に、「Illustrator」や「Photoshop」で作ったものは、どのパソコンで開いても同じように見える、という設定ができます。
※ここでは設定の詳細は省略します。今度別の記事でご説明します。
ただ、WordやExcelで加工したものは、印刷会社でデータを開いたときにどこまで再現できるのか、微妙なところです。
もしかすると、文字の加工が崩れてしまったり、フォントが変わってしまったりする可能性もあります。
次に「色」についてですが、これが一番やっかいで、WordやExcelの色設定には、蛍光色のような色味も選択できます。
WordやExcelでデータを作成する方には、この蛍光色がお好きな方が多いんです。
画面上ではきれいで目立つ色に見えますからね。
ただ、通常の紙印刷のインクでは「蛍光色」は表現できません。
かなり色が沈んでしまいます。
そのため、仕上がった印刷物を見たときに、
「もっと鮮やかなイメージだったのに~~!」
ってなる可能性が高いです。
「特色印刷」に対応している印刷会社だったら蛍光色の印刷もできますが、通常紙印刷は「CMYK」という4色の掛け合わせでの印刷になります。
・C(シアン):水色
・M(マゼンタ):ピンク
・Y(イエロー):黄色
・K(キング):黒
の4色のインクの掛け合わせで、あのきれいなフルカラーを表現してるんですね。
この4色は蛍光色ではないので、蛍光色は表現できない、という訳です。
じゃあ、WordやExcelの蛍光色は何なのかと言えば、「RGB」という色の組み合わせでの表現になっています。
いわゆる「光の3原色」です。
・R(レッド):赤
・G(グリーン):緑
・B(ブルー):青
パソコンのモニターやTVなどは、この光の3原色で構成されていて、鮮やかな蛍光色も表現できているんです。光ですからね。
WordやExcelは原則パソコンのモニタ上で見るデータを作成するものなので、「RGB」を基本にしているのだと思います。
ちなみに紙印刷ではなく、WEBデザインだったら、パソコンのモニタで見るものなので、RGBの色味を使っても問題はありません。
「Illustrator」や「Photoshop」はWEBデザイン用の素材作りにも対応しているので、カラーモードが「RGB」と「CMYK」を選べるようになっています。
紙印刷なのに「RGB」のモードでデータを作成してしまうと、最終的に必ず「CMYK」に変換をしなければいけないので、仕上がった印刷物の色味がイメージよりも沈んだ感じになってしまいます。
そして、レイアウト。
WordやExcelの用紙サイズの設定などは、印刷会社の印刷機で印刷することを想定してシステムがつくられているわけではなく、あくまでも簡易的なプリンターでの出力を想定しています。
そのため、勝手に四隅に白フチが入る設定になっていたりします。
背景色や画像を端まで入れたいと思っていても、きちんと設定をしておかないと四隅に白フチが入る仕上がりになってしまったりします。
また、文字や画像の位置合わせも、「Illustrator」のように0.1mm単位でできるものではないので、微妙にずれてしまったりして、素人感が出てしまうんですね。
最後に「画像」。
画像で一番問題になるのは「解像度」です。
一般の方にはあまりなじみのない言葉かもしれませんが、印刷物にとってはかなり重要なキーワードとなります。
解像度というのは、簡単に言えば画像の細かさです。
画像データは小さな小さな点の集まりでできています。
その点が1インチの中にたくさんあればあるほど、きれいな画像になります。
でも、その分容量は重くなります。
印刷物に適している解像度は、300~350dpiです。
画像の解像度は「Photoshop」だったら、確認・変更ができます。
もしかすると最近は、解像度を確認できるアプリなどもあるかもしれませんね。
私は存じ上げないので、ご存知の方がいましたら、逆に教えてください。
ちなみに、PCやスマホなどで見るサイトに使われている画像の解像度は72dpiです。
サイトはなるべく早く表示されるように軽く作成する必要があるので、解像度を低めにするんですね。
画面上だったら、解像度72dpiでも十分きれいに見えますので、問題はありません。
一方印刷物の場合は、解像度72dpiでは解像度が低すぎて、かなり粗い表現になってしまいます。
ちょっとぼやけてしまったり、輪郭がギザギザしてしまったり。
WordやExcelでも画像を挿入することはできますが、ではその画像の解像度はいくつになっているでしょうか?
もしどこかのサイトからダウンロードした画像を印刷物に使おうと思ったら、それ自体も違法の可能性がありますが、そもそもきれいに印刷はできません。
画像についてはここでは言い尽くせないほどの注意事項があるので、また別の記事で語ります。
そんなこんなのいろいろな理由により、WordやExcelで印刷用のデータを作成するのはリスクがかなり高いということです。
「仕上がりに全くこだわらない」
「デザインや色味が変わってしまったっていいんだ」
という方はWordやExcelで作っても対応してくれる印刷会社はあるのでいいと思いますよ。コスト削減できますしね。
でも、せっかく貴重なお金を払って印刷物を作るなら、できる限りきれいに、イメージ通りのものを作りたいですよね。
それならやっぱり「Illustrator」や「Photoshop」を使って作りましょうよ。
そうはいっても、どうやって入手すればいいかもわからないし、使い方もわからない、という方のお手伝いをするために、私はこのブログを始めました。
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